だいぶ前に子猫が回虫寄生で下痢がひどくなった話をしましたそれだけではないだろうと思いましたがそれ以来外で拾われたネコちゃんや子猫では早い時期に駆除するようになりました。今日はサナダ虫とよばれる条虫の話です。条虫はノミから移ります。直接卵を口にすることでは移らず、ノミのような中間宿主とよばれる仲介者から感染するのです。ですから猫から直接移るものではありません。また、糞便検査では分からず、乾くとゴマのように見える体節という体の一部が糞便の周りにくっついていることで分かります。これは犬も猫も同じです。ノミは家の中でも増えますので寄生は1年中ですが、ノミを口にしてから体節が出てくるまでに1か月はかかりますから生後数か月の子猫、子犬ではまず考えなかった寄生虫です。
しかしつい最近3カ月位の子猫で嘔吐・下痢・食欲不振がみられ、数日後糞便中に体節が出てきたため条虫を駆除したところ回復したということがありました。この時期の子猫でこのような症状を出すものに猫汎白血球減少症という死につながる怖い病気があります。まずそちらをうたがって検査をすると陰性でした。ほっとしたのもつかのまひどい下痢になり食欲もなくなってしまいました。
吐き気もあります。そうなると疑われるのは異物の摂取です。腸閉そくをおこしていたりするとこのような症状がでます。しかしおもちゃやトイレの砂など摂取した形跡がなく、腹部の触診でも異物らしいものは触りません。なんだいったいこれはとあれこれかんがえているところ、点滴をして数日後便に条虫の体節が少量でてきたので念のため駆除すると、そのご便とはいえないほどのほぼ粘液だけの便がでて、それにまじって条虫の塊がでてきました。この量なら腸閉そくをおこしていてもおかしくないほどの量でした。これでもう良くなるだろうと思っていましたが、結局1週間位かかりました。
今は元気にもとの食欲を取り戻しています。
めでたし、めでたしでしたが、条虫寄生でこれだけひどい症状を起こした子を見たことがなかったので、これからは若い子でも投薬ができる年になったらなるべく早いうちに駆除するべきだとおもいました。
ちなみに条虫でもマンソン裂頭条虫という虫は糞便中に卵が排泄されますので糞便検査で分かります。この虫にも中間宿主がいて、蛇やカエルなどの両生類や爬虫類です。落ちにくい虫なので、駆虫には通常の条虫駆除剤の2倍量の投薬が必要です。
条虫は他の回虫などの線虫とよばれる寄生虫の駆除剤では落とせません。しかし、現在条虫・線虫が駆除できるスポット剤がでていますので簡単に投与することができます。生後6週から投与できます。外から拾ってきたネコちゃんは年齢に関わらずノミなどの外部寄生虫の駆除、検便をして適切な内部寄生虫駆除、フィラリア予防、ワクチン接種で予防できる病気は予防する、これらのことが大切だと改めて感じた出来事でした。
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