心雑音のお話をしました。
検診やワクチンなど健康なときにたまたま心臓に雑音がすると言われたときどうすればよいでしょうか?
ある程度年をとってきて発見される場合、この僧帽弁閉鎖不全症が犬で一番多い病態でしょう 。
僧帽弁とは肺から還ってきた血液が入る左心房とその先の左心室とのあいだの逆流を防いでいる弁です。この弁が完全に閉じずに左心房に逆流してしまう病態です。
なぜこの弁が閉じなくなってしまうかというと、弁の性状が加齢や心内膜炎の結果変化してしまうことが原因として考えられています。またなり易い犬種もあげられています。心内膜炎は口腔内、尿路、皮膚、呼吸器感染から波及して起こることがあります。口腔内では歯石下の細菌の増殖が重要な原因となりえます。それゆえ口腔内の衛生管理はなんらかの形でやっていただきたいのですね
左心房は逆流してくる血液のせいで拡大し、左心室は全身に送り出す血液量を確保しようとして容量を大きく、つまり拡大してきます。全身へ送られる血液が減ってくると身体は血圧をあげるように働きます。血圧があがるとそこへ血液をおくりだすポンプの役割である心臓への負担がまた大きくなるという悪循環に入ってしまいます。
左心房が拡大すると気管が圧迫されて咳をするようになります。
また、症状がすすむと直前の臓器である肺に血液がうっ滞し、水分が浸み出て肺胞に水がたまる肺水腫という状態になります。それによる湿った咳が出るようになり、当然呼吸が苦しくなってきます。処置が遅れると死亡してしまう状態です。
つまり、心雑音があって症状のない子でも放置していると病態は悪化してくる可能性があるのです。
症状のない元気なこだからこそ治療を始めてもらいたい理由がそこにあります。症状がないから大丈夫ではなく、数年後の健康なわが子を想像するなら早めに検査をうけ適切な治療を始めましょう。